刃物のお話
2025.05.03
大切な相棒(その1) 3台のスプリングハンマー
![20250503_160418[1]](../../../../images/images20250503161146.jpg)
鍛冶屋の道具でひときわ存在感を持っているのがスプリングハンマーなどの鍛造機です。当工場には用途によって使い分けている3台のハンマー機が据わっています。
まずは新潟県の近藤與助工業製のカクヨ式スプリングハンマー2号機。私のところで最も長く稼働している物で、元々は祖母の生まれ故郷である森吉町阿仁前田の廃業された鍛冶屋さんが昭和34年から使用されていた機械で、人間で言えば66歳になります。私が使い始めてから18年になりますが、いろいろと細かい修理はしているものの現在も元気に私の仕事を支えてくれる、頼もしい存在です。
元々はこの一台しかなかったのですが、今は主に鋼付けやタガネでの切断、櫃抜きなどの強力な打撃を必要とする作業にのみ使用しています。
スプリングが大きいので分銅のストロークが長く、高速で回せない代わりに一回当たりの打撃が強いです。
仕事前に必ずすべての機械や道具に向かって前日の感謝と朝の挨拶を込めて一礼するのが私の日課です。相方がいない一人鍛冶屋にとって、彼らは単なる機械ではなく家族同様に大切な相棒です。
![20250503_160434[1]](../../../../images/images20250503161209.jpg)
こちらの青い機械は同じく新潟の寺澤鉄工所製、SH-A型1号機です。寺澤鉄工所さんは現在日本で唯一スプリングハンマーを製造している大変貴重な存在です。
この機械は私が鍛冶屋を開業してからしばらくして、お客様からの情報提供がきっかけで寺澤さんに中古のハンマー機をオーバーホールしていただいて導入したものです。ほとんどの部品が新品と交換されたため2020年に導入した際には新品と遜色ないほどピカピカの機械でしたが、だいぶ塗装も傷んで年季が入ってきました。
カクヨ式と比べるとかなり高速で回せますので、ベルトハンマー機に近いリズミカルなテンポで打つことができ、私は鍛接が終わった素材を刃物の形に伸ばす工程や、鎌などの薄物の火造りに使用します。
刃物を打つには作る品物によって頻繁に槌を交換するのですが、カクヨ式はだいぶアリ溝が減っていて交換が難儀だっただけに、今ではこの機械のおかげで槌をあまり交換しなくても2台で用途分けができているので本当に助かっています。
![20250503_160504[1]](../../../../images/images20250503161231.jpg)
こちらの機械は先の青いハンマー機と同じSH-A型1号機ですが、私の工場にもっとも最近据え付けしたもの。年齢はカクヨ式とほぼ同じです。
元々は隣の大館市の鍛冶屋さんが長年愛用されていた機械で、数年前にご家族の方のご厚意で、金屑に捨ててしまうよりは活用してほしい。との希望がありましたので私の方で引き取らせていただいた物です。
工場内すべてを片付けると言うことで、撤去作業にあたっては、二ツ井町の安保鍛冶屋さんをはじめ、たくさんの方々にご協力をいただきました。鍛冶屋が鍛冶屋の最期を見届けるのはどこか寂しさもあれば、長年のご苦労を感じることもあり、道具を引き継ぐ責任を改めて感じました。
この3台目はいったい何に使っているのかとなれば、当工場には鋏専用のコンパクトな横座があります。鋏を製作するには従来の火床は大きすぎて、打刃物用の横座と鋏用横座は別個になっており、こちらは鋏の材料を打ち延ばす作業専用として活用しています。
3台とも元々は別の御主人のもとで活躍していました。先にお使いになられた鍛冶屋さんの長年の思い出が詰まった相棒を大切に労わりながらこれからも使い続けていきます。
![20250424_131505[1]](../../../../images/images20250424145731.jpg)