関刃物について

かつて鉱山で栄えた鹿角市石野の地で
画像は我が家に保管している昭和25年の鉱山全景を写したものです。
この吊り橋を渡った先が、当工場のある石野地区。橋の向こうに見える木が生えていない部分がすべて鉱山。山の麓にかすかに見えているのが鉱山長屋や映画館などの施設ですが今は跡形もありません。
小真木鉱山(旧白根金山)は金や銅を産出した鉱山で、石野地区はこの鉱山と唯一地続きになっている集落でありました。鉱山が栄えたことで吊り橋が架けられ川を越えて(写真の左方面)から鉱山へ働きに来る人々で石野は大変にぎやかだったと言います。
鉱山には鍛冶屋が必ず必要で、当時の石野にも鍛冶に携わる人が実際に居られました。今では吊り橋の橋台跡が石野側にあるだけ。集落自体もわずか17軒となり、昔の記憶も徐々に忘れられようとしています。鹿角市在住の人でも石野ってどこですか?と言われるほど面影が無くなってしまいました。
長い歴史ある石野の名を多くの人に知ってもらいたい、覚えていてほしい、そんな願いから当工場の製品には「石野」の文字を入れています。

「とにかく叩く!」 できることは全て自分で。
手間を惜しまずに造れば使う人に喜んでいただけると思っています。
例えば「鋼付」とか「〇〇入」という文言をよく目にしますが、だいぶ前から鍛接の工程を自分でしない鍛冶屋さんがほとんど。利器材という予め接着された材料を使うのが業界の定番です。当然ですが社会的需要を満たすにはこうした製法は必要で品質も非常に安定した物が作れます。
仮に私が利器材を使用しても相応の設備がないので量産はできないのが現実です。それならあえて私の刃物を買ってくださった皆様が、これは鍛冶屋が自分で鋼を付けた物だと、ちゃんと叩いて作ったものだと、そう語り継いでいってくれる刃物を造りたいという願いから、利器材や金型、型紙すら使わない自家鍛接、総火造、フリーハンド成型にこだわった刃物づくりに取り組んでおります。
時代の流れで自家鍛接できる素材もだいぶ限定され、鍛接に掛かる燃料費も驚くほど高くなりました。できるところまで頑張りますが近い将来、利器材の使用も検討する必要が出てきている気がします。

見えない工程が使い勝手につながります。
写真は石野印剪定鋏が素材からどのように変化するかを表しています。
当工場の剪定鋏は元から末まで全てハガネで作られています。左側の2個並んでいる四角い材料を「叩く」という作業で右側の状態まで作り上げます。
現在日本で主流になっている製造方法は、この写真で言う真ん中の状態から専用の金型を装着したプレス機で順番に型にはめて鋏の格好を作ります。
当工場の場合は金型は使用せず、フリーハンドにて叩いて形を造りますので寸分も狂いなく同じ鋏を2丁造るのは不可能ですが、お客様の希望される形に如何様にでも変化させて造ることが可能です。出来上がった製品を見てもこの途中経過は誰にもわかりませんが、見えないからこそ使い勝手を決める重要な要素であります。

「裏スキ」ではありません「裏打ち」です。
秋田県の鍛冶屋では「裏」は鋤くのではありません。「打つ」のです。
写真は当工場で製作している秋田ナガサの焼入れ前の状態です。
鍛造が終了した状態をそのまま砥石で裏押ししますと、このように綺麗に縁だけが当たるようになっています。これをこのまま焼入れして刃付けしたものが「鍛造そのままシリーズ」として当工場の看板商品となっている品物です。
仮に磨き仕上げをする場合は、もうすでに裏の形が決まっていますのでグラインダーでガリガリ削る必要がないのも「裏打ち」という造り方の特徴です。
グラインダーなどの研削機械がない時代に、きっと鍛冶屋の先人たちは極限まで叩いて成型する技術で刃物を作っていたに違いありません。今の時代ならいくらでも簡略化できてしまう工程ではありますが、こうした部分を手を抜かずにやっていくことが伝統を繋いでいく本来の意味であると考えています。

自らも使用して、常に実用性第一の刃物造り
自分で使って、使い勝手を確かめることは大事な勉強だと思います。
昔から日本では「餅は餅屋」などと言って、刃物は鍛冶屋に作らせれば大丈夫!と思っている人も多いでしょう。しかしながら、自分で自分が造った製品を使用している鍛冶屋さんは意外と少ないような気がします。
例えば鉈を造っている鍛冶屋が山で鉈を使ったことがないとすれば、その鍛冶屋さんは鉈を使う人の気持ちは理解できないだろうと思うのです。私は毎日料理をします。台所にある包丁はすべて自らの手で作った物です。山にも行きます。元々仕事で樹木の伐採や高所での枝切りをしていましたし、山菜採りは日常生活の一部です。
私の造る刃物はどれもこれも飾り気のないシンプルなものばかりです。実用性を第一に前例や固定観念に縛られずに、こうしたらもっと使いやすいのでは?と思ったことはすぐに反映させます。
刃物を使う経験の浅い方は最初どうしても格好や見た目を気にされますが、最終的に持ち歩いて使うものはシンプルなものに辿り着いてしまうのではないでしょうか。私も過去はそうでしたから、カッコいいのが欲しい!という気持ちはわかります。
装飾的要素はメンテナンスの手間を増やすのでほぼありません。最初派手に飾った道具ほど、使い込むとなぜか格好悪くなって使わなくなってしまいがちです。
実際に使うことを想定して必要なところに重点を置き、地味ですが常に進歩させていくと、最終的にそれが機能美と言いましょうか、カッコよく見えてくるものです。
もしもお客様の使い方に合わない製品ができてしまっても売りっぱなしにはせずに更に改良をしてより使いやすいものに仕上げます。
伝統というのはあくまでもその製品を作る過程(製法)だと思っており、製品というものは使う人と鍛冶屋の関係性の中で常に進歩していくものでなければだめだと思っております。
写真のナガサはV2鋼の7寸、ナメコ採りの相棒です。

作業の様子をお見せしております!
自分の目で作業を見たい方はご連絡ください。
私の場合、製造から事務作業まですべてワンマンで行っている関係で作業をしながらお客様とお話をするということもしばしばあります。そんなことをしているうちに、「注文した品物を作っている工程が見たい」、「火造りを見せてほしい」と言う声も聞こえてくるようになり、私としても鍛冶屋に興味を持っていただく良い機会だと捉えて見たい人には一から十まで全てお見せしています。
お客様でも、同業者でも、見たいという方には包み隠さずお見せしております。
突然ご来店いただいても火造りしていない場合もありますので、興味のある方は事前にお問い合わせください。日程を調整させていただきますので遠慮なくどうぞ。
※どんな作業でもとりあえず見てみたいという場合は基本的にどの営業日でも対応しますが、訪問前にご一報いただくようにお願いいたします。
※目の前で作ったものを持ち帰りたい場合や、確実に火造りしている様子を見たい場合は余裕をもって事前にご相談ください。
※火の粉が飛んでも火傷をしない服装で工場へお越しください。
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刃物・道具の修理もお任せください。
自社製品、他社製品問わず、修理、研ぎ直しを承ります。
包丁、鉈など、刃物の研ぎ直しから柄の交換、鞘の新調なども可能です。
特殊な形状の器具や刃物の研ぎ直しもご相談に応じます。
また、長すぎる包丁を短く加工したい。なども湿式の機材を活用して熱を加えずに加工が可能ですので必要に応じて対応しています。
ご希望に沿って、ご予算に合わせてメンテナンスをさせていただきます。
(100円で買った包丁だから50円で研いで!などの無理なご依頼は受け付けません)
剪定鋏に関してもメーカーや鍛冶屋さん問わず修理に対応いたします。
他社製剪定鋏の場合は限りなくその作者の研ぎ方に即してメンテナンスを行いますので外観や使用感を損なわないとご好評をいただいております。薬師堂国定をはじめとする作者本人による修理ができない鋏の左ネジ修正も行っております。
(現在営業している鋏鍛冶のネジは可能な限り製造元へご依頼ください)
一般刃物研ぎ単価:¥550~2,200- (包丁や鉈など、税込み)
剪定鋏修理単価:¥2,200~ (ヤニ取り・刃付け・給脂・調整、税込み)
上記以外の詳細な修理単価はお問い合わせください。
| 社名 | 関刃物鍛冶工場 |
|---|---|
| 所在地 | 〒018-5335 秋田県鹿角市十和田瀬田石字下石野8 |
| 代表者 | 代表 関直人 |
| 設立 | 平成31年(令和元年) |
| 主要設備 | スプリングハンマー、大型グラインダ、バフレース、ベルトグラインダ、万能木工機 その他 |
| 事業内容 | 剪定鋏、各種手打刃物製造および販売・関連木工品製造・各種修理 |
今から二十数年前、地元の鍛冶屋である山一刃物工房へ立ち寄ったことがきっかけで鍛冶屋の仕事に興味を持ち、「職人になりたいなら見て盗め」と言う教えのもと、同工房に足しげく通ってひたすら仕事を見て覚えることを実践し、会社員として働きながら自宅に設けた仮の工場で刃物造りの練習を重ね、平成31年に必要な設備を整えて当工場を開業いたしました。現在では剪定鋏を主要製品として、包丁や鉈などの刃物類、鎌や鍬などの農工具類、抜き物と呼ばれる斧など、ありとあらゆる業種に対応した製品をご要望に合わせて完全受注製作しております。また、各種木工機械を設備しておりますので刃物類の鞘や特殊な形状の柄など市販品で対応が難しい木工品の製作もご相談に応じています。県内外の同業者様にも大変お世話になっており、大きな斧などの製作にあたっては先輩の鍛冶屋さんに相槌を打っていただいて櫃抜きをしたり、私が手伝いに出向いたり、同業者同士のつながりも大切にして仕事をしております。
やむなく廃業された鍛冶屋さんからのご厚意で長年愛用された機材を譲り受けて使用している物もあり、その責任の重さを感じながら伝統を繋いできた先輩方に恥じない刃物造りに日々努力をしているところです。
普段はすべての工程を一人で行っている都合上、まとまった数のご注文や卸売りには対応しておらず、年間に製作できる量も限られておりますので以前のような在庫品の展示販売は現在行っておりません。予めご了承ください。
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